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第1章 16 資金援助の提案

last update Huling Na-update: 2025-07-12 19:11:16

 『アムル』の村でささやかなもてなしを受けたときには、日は大分傾きかけていた。

私とリーシャは村長のドーラさんとスヴェンと一緒にお茶を飲みながら、今後の村の援助のことについて話をしていた。

「私が村に運んできた食料は恐らく持っても一月程だと思うのです」

私の言葉にドーラさんは神妙な顔で頷いた。

「ええ、姫様の運んでいただいた残りの食材は保存庫に移動させましたが……恐らくはそれ位しか持たないでしょうね」

「何とかなるだろう? 戦争も終わったことだし、後一月も持つなら村の復興をしながら食料の確保を……」

スヴェンが言いかけると、ドーラさんが口を挟んできた。

「スヴェン……本気で何とかなると思っているのかい?」

「う、そ、それは……」

スヴェンはチラリと私を見た。恐らく私に気を使ってそのような言い方をしたのだろう。私は自分の考えを伝えることにした。

「恐らく村人たちだけでは到底解決できないと思います。ですから、私に援助させて下さい」

「え!? 姫さん。何を言ってるんだよ!?」

「クラウディア様、そんなこと可能なのですか?」

スヴェンとリーシャが驚きの声を上げる。その一方、ドーラさんは真剣な表情で私に尋ねてきた。

「姫様……それはどういうことですか?」

「ええ、詳しくお話いたします」

大丈夫、恐らくこの世界は回帰前と状況は変わっていないだろう。私は一度呼吸を整えると説明を始めた。

「この国は『エデル』と戦い、敗戦したことで『エデル』の国の属国となりました。その証として、私はかつての敵国に嫁ぐことが決まったのです。もう決して盾突くことが無いように……いわば人質のようなものです」

「その通りです……お気の毒なクラウディア様……」

リーシャがポツリと言う。

「「……」」

ドーラさんとスヴェンは黙って私の話を聞いているけれども、その眼には同情が宿っているように感じられる。

「『レノスト』王国が『エデル』の属国となったので、この村は『エデル』の領土になりました。そこで私は国王に新たな領民となった『アムル』の村に資金援助をしていただくようお願いしてみます」

「「何だって!?」」

私の話にドーラさんとスヴェンが驚く。

「そんな無茶ですよ! あの国王がクラウディア様の願いを聞き入れるとは到底思えません! 逆にクラウディア様の御身が危険にさらされます! どうか考え直してください! あの国王
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